♥ 西ドイツ対イングランド

昔のファミコンのスポーツゲームで，
WATCHモードというのが付いていることがあったのです．
コンピュータ同士に試合させて，
それをぼーっと眺めているのです．

僕はけっこう好きでした．
ファミスタのような野球ゲームで，人間ではありえないような
ミスが頻発していたとしても，
コンピュータ同士でお互いサマなので，
試合としては案外拮抗してたりするのです．

しかし，WATCHモードがもっとも熱かったのは，
スーパーファミコン版の「スーパーフォーメーションサッカー」でした．
まるでシナリオがあるかのような好ゲームになるんです．

記憶の中の西ドイツ対イングランド．

西ドイツはこの時，中盤にメンラー，ヘンスラーのツイン指令塔を擁し，
最終ラインに闘将マテルス，そしてトップにプリンスマンという
恐ろしいチームでした．

対するイングランド，
鉄壁の守備を誇るGKマーシンに，中盤には全盛期のガスコーイ，
そしてツートップはシャンプーとリンスという
やはり豪華な布陣．

版権の都合で実名が使えず，
びみょーにデフォルメされた名前になっているのが
時代を感じさせます．

試合はまず，西ドイツが主導権を握りました．
メンラー＝プリンスマンのホットラインが完全に機能し，
変幻自在な攻撃から
イングランドの中盤を切り刻みます．

このゲーム，プリンスマンのパラメータ（能力値）が笑っちゃうほど高いのです．
当時友人の中には「プリンスマン恐怖症」に陥った者もありました．

気づいてみれば，プリンスマンのハットトリックで
前半は３-０で折り返し．
もうこれは西ドイツだろうと，僕も焼きそばバゴーンをすすりつつ
こたつでぼーっと見ていたのです．

しかしこの試合は，そこから盛り上がっていったのです．
後半開始早々，イングランドが反撃に出ました．
攻撃参加に上がってしまったリベロ，マテルスの不在を突いて
単独ドリブルで切れ込んだシャンプーがそのままミドルシュート，ゴール！

その５分後，左サイドから上がったガスコーイの長いクロスに
シャンプーが頭で合わせ，ゴール！！　３対２！！

おいおい，これはわからんぞ，と
僕はみかんの皮をむきながら，ぼーっと見ておりました．

西ドイツも猛攻をしかけますが，
イングランドの決死のディフェンスの前に攻めあぐね，
頼みのプリンスマンのシュートもバーに嫌われます．

そのうちヘンスラーが足をかけられて負傷．
審判が近寄ってきますが，イングランドDFおとがめなし！
負傷するとその試合中，能力値が下がるのです．

いよいよイングランドペース．
ショートコーナーから上がったセンタリングを
リンスがきっちり押し込んで，ゴール！！
３対３，ついに同点！！

試合はロスタイムへ．
両チーム決め手を欠き，延長突入かと思われた時でした．
中盤でボールを受けたガスコーイが
ちょっとドリブルしてからロングシュートを放ったのです．

ボールは高い弾道でゴールの隅いっぱいに飛んでいました．
GKもはじくのが精一杯．
しかし，このこぼれ球に画面外から飛び込んできた選手がいたのです．


しゃ，シャンプー！！！


ゴオオオオオオオオル！！　ハットトリック達成！！

イングランドが３対４で見事に逆転勝利．

その劇的なシーンを僕は
シャツにアイロンをかけながら見ておりました．

本当に，なぜかわかりませんがこういう試合が多いのです．
しかも，点の取り合いになるので
見ていてすごく楽しかったのです．

最近そういうのないなあと，ふと思いました．