♥ reveillon - フランスの新年

すっかり年末ですね．

フランスで新年のことをレヴェイヨンréveillonと呼びますけど，
（正確には，クリスマスや大晦日の深夜の会食のことらしい）
基本的に友達と出かけてぱーっと騒ぐイベントとなります．
そして翌日の１月１日は，みんな寝てる（笑）．

僕もパリに来た最初の年に，
うわーフランスのお正月ってどんなのだろう，と期待に胸膨らませ
友達と出かけました．
ボブール（ポンピドゥ美術館）の前の広場で，
スペクタークル（見せ物）があるというのです．
見物人のほうもすごい人出でした．

いや，それはもう素晴らしかったです．
クレーンを何台も動員して，大掛かりなパフォーマンスがありました．
真っ暗な中，サーチライトで照らし出された軽業師や踊り子が
激しい音楽にのって空中を舞い飛ぶのです．

カウントダウンのあと，一斉に新年を喜びます．
みんな近くにいる人と抱き合い，祝福のキスをします．
僕も知らないきれーなおねーさんに
「Bonne année！」（ボナネ，あけましておめでとう）とキスをされて
えへへ，となりました（＜基本的に単純な精神構造）．

そこで終わっていたら，
フランスの新年っていいなあ，だったんですけれど，
幸か不幸か，そうではなかったんですよね．

（つづき）

深夜１時頃になりまして，さてそろそろ帰ろうかなと思いました．
友達とはポンピドゥ前のあまりの人出に，
すでにはぐれてしまっていました．
当時の僕は，携帯電話を持っていなかったのです．

気がつくと，終電がないのです．
今でこそパリ市も，この日だけはメトロの深夜運行を行いますが，
当時はまだふつーに12時半くらいで最終でした．

しかたなくタクシーを探します．
でも，ちょっと考えてみて下さい．
周りにいた大勢のフランス人もみんな帰れなくなって，
同じようにタクシーを探している訳です．

「タクシー乗り場」に100人くらい並んで待っているのを見て，
ああ，これはもう，

歩くしかない

ということになりました．

さいわいパリという街は，とてもサイズの小さな街で，
東京の山の手圏内くらいの大きさしかないのだそうです．
それを心の頼みに，僕は歩き始めました．

なるべく広い通りを行きました．
まずシャンゼリゼ，凱旋門まで行ければあとは何とかなると思っていました．
パリの大改造工事を行ったオースマン男爵に
この時ほど感謝したことはありません．

ひたすら寒いんですよ．さっきまでの熱気はどこへやら．
凱旋門の近くで，前から歩いて来た少年二人に
「Bonne année！」と声をかけられました．

抱きついて来たんですけど，
彼の右手が僕のコートの内ポケットに伸びていたのですよ．
僕は左手でがっしりと彼の手首をつかんでブロックしつつ，
右手で彼の肩をぽんぽんと叩いて「Bonne année！」と笑顔で挨拶を返し，
そしてそのまま何事もなかったかのように別れました．
まあ，パリってそーゆーところです．

それはいいとして，けっきょく２時間半くらい
寒い中を歩いて帰って来て，風邪を引きました．
フランス人のみなさんとはちょっと違う意味で寝正月でしたでしょうか．

いやーなんだかあれ以来，あんまり出かける気がしないんですよね．
基本的にレヴェイヨンは，出かけようって誘われても
断るようになっちゃいました（笑）．