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R(レーティング)戦,第73局.
ここ10戦を3勝7敗と大きく負け越していた私は,不調に喘いでいた.しかし祝日という好機を逃す訳にもいかず,私はインターネット将棋の聖地<将棋倶楽部24>へと赴いた.手元のサイドテーブルにはトワイニングのイングリッシュ・ブレックファストティーと,1本のペリエが用意されている.今日の相手は(果物のような)かわいらしいハンドルネームを持つ方だったが,女の子かもと油断してはならない.98%の可能性で中身はオッサンである.虚々実々.対局室に入った瞬間から,戦いは既に始まっているのだ.
先手を引き当てた私は,目を閉じてひと呼吸してから,初手▲7六歩を突いた.相手はノータイムで△8四歩と突いた.居飛車の宣言,もっと正確には矢倉の打診である.私はペリエを飲んだ.このところ振り飛車に出会う確率がめっきり減り,代わりにこの△8四歩に多く出くわすようになった.しかし相矢倉まで進行することは殆ど無く,その大半が棒銀などからの超急戦である.冬休みだからなのだろうか.
私は▲6八銀と上がり,矢倉を承認するというサインを発信した.相手は△3四歩と突き,私は▲6六歩と角道を止めた.<矢倉>の5手目は▲7七銀もあり,一長一短で好みの分かれる部分だ.△6二銀に▲5六歩の打診.私は態度を尋ねた.ここが最初の分岐点となる.もし△5四歩と応じてくれれば本格的な矢倉戦へのルートに乗る.しかし△6四歩であれば.......
後手は少考の後△6四歩と突いた.私はペリエを飲んだ.<右四間>が来る.
ここ10戦を3勝7敗と大きく負け越していた私は,不調に喘いでいた.しかし祝日という好機を逃す訳にもいかず,私はインターネット将棋の聖地<将棋倶楽部24>へと赴いた.手元のサイドテーブルにはトワイニングのイングリッシュ・ブレックファストティーと,1本のペリエが用意されている.今日の相手は(果物のような)かわいらしいハンドルネームを持つ方だったが,女の子かもと油断してはならない.98%の可能性で中身はオッサンである.虚々実々.対局室に入った瞬間から,戦いは既に始まっているのだ.
先手を引き当てた私は,目を閉じてひと呼吸してから,初手▲7六歩を突いた.相手はノータイムで△8四歩と突いた.居飛車の宣言,もっと正確には矢倉の打診である.私はペリエを飲んだ.このところ振り飛車に出会う確率がめっきり減り,代わりにこの△8四歩に多く出くわすようになった.しかし相矢倉まで進行することは殆ど無く,その大半が棒銀などからの超急戦である.冬休みだからなのだろうか.
私は▲6八銀と上がり,矢倉を承認するというサインを発信した.相手は△3四歩と突き,私は▲6六歩と角道を止めた.<矢倉>の5手目は▲7七銀もあり,一長一短で好みの分かれる部分だ.△6二銀に▲5六歩の打診.私は態度を尋ねた.ここが最初の分岐点となる.もし△5四歩と応じてくれれば本格的な矢倉戦へのルートに乗る.しかし△6四歩であれば.......
後手は少考の後△6四歩と突いた.私はペリエを飲んだ.<右四間>が来る.
そこからの指し手はお互いノータイムだった.相手は一直線に右四間の攻撃陣を組み立て,私はそれを迎撃するため,<対右四間>専用の防御陣形を敷いた.この攻撃は通常△6五歩から開始される.後手は居玉のままで戦いを始めるのを流石にためらったのか,ここで一度△5二金右の防御手を入れる.だがこちらの▲3六歩を見て先攻されると感じたのか,猛然と△6五歩を突いて来た.私は▲6九玉と居玉を外し,△6六歩の取り込みを呼び込む.こうして戦いは始まった.
まるで定跡書のような進行.やはりノータイムでの指し手が続き,わずか30秒後には最強を誇るはずの<右四間>の攻撃が完全に止まっていた.そればかりか,後手は飛車も角も切るという捨て身の攻撃に出,もはや私の勝勢は動かないものとなっていた.その派手な攻撃,さながら夏の日の花火のように.私はペリエを飲んだ.だが問題はここからなのだ.free戦ならばここで相手は戦意喪失し,投了する.しかしこれはR戦なのだ.誰も最後まで諦めない,R点を賭した戦いなのである.優勢を築いたが故に心に油断が生じ,逆転を許してしまったケースを,これまでにいったい何度見てきたことだろうか.
ここから私は,12分ほど残っていた時間を使い,慎重に慎重に指し手を進める.残された仕事は5一にいる敵の玉を捕まえることだった.居玉の攻略には▲5四桂と縛ってしまうのが一番早い.だが今回相手は,飛車角は切っても桂馬を切ってはいなかった.私はじっと考えて,まず▲5四歩と,そして▲5三銀と打って敵玉を縛った.味方の飛車は2八から動いておらず,自陣の守りに効いている.これならすぐさま危険が迫ることはない.
後手は恐らく最善に近い防御で抵抗を見せた.私は珍しく,駒を切っての即詰みを狙わず,重くとも確実な寄せを選択した.じりじりと敵玉に迫り,退路を断ち,金銀を取り上げてゆく.玉を袋小路の3二まで追った時にようやく詰みが見えた.後手はほどなく投了した.私はペリエを飲んだ.右四間を定跡通りの手順で退けただけに過ぎない,にもかかわらず神経を使う一局だった.
私はこうして,ペリエ緒戦のクリスマス対局を勝利で飾り,また続いていたR戦での連敗を止めることができた.やはりペリエだと思った.
<完>
まるで定跡書のような進行.やはりノータイムでの指し手が続き,わずか30秒後には最強を誇るはずの<右四間>の攻撃が完全に止まっていた.そればかりか,後手は飛車も角も切るという捨て身の攻撃に出,もはや私の勝勢は動かないものとなっていた.その派手な攻撃,さながら夏の日の花火のように.私はペリエを飲んだ.だが問題はここからなのだ.free戦ならばここで相手は戦意喪失し,投了する.しかしこれはR戦なのだ.誰も最後まで諦めない,R点を賭した戦いなのである.優勢を築いたが故に心に油断が生じ,逆転を許してしまったケースを,これまでにいったい何度見てきたことだろうか.
ここから私は,12分ほど残っていた時間を使い,慎重に慎重に指し手を進める.残された仕事は5一にいる敵の玉を捕まえることだった.居玉の攻略には▲5四桂と縛ってしまうのが一番早い.だが今回相手は,飛車角は切っても桂馬を切ってはいなかった.私はじっと考えて,まず▲5四歩と,そして▲5三銀と打って敵玉を縛った.味方の飛車は2八から動いておらず,自陣の守りに効いている.これならすぐさま危険が迫ることはない.
後手は恐らく最善に近い防御で抵抗を見せた.私は珍しく,駒を切っての即詰みを狙わず,重くとも確実な寄せを選択した.じりじりと敵玉に迫り,退路を断ち,金銀を取り上げてゆく.玉を袋小路の3二まで追った時にようやく詰みが見えた.後手はほどなく投了した.私はペリエを飲んだ.右四間を定跡通りの手順で退けただけに過ぎない,にもかかわらず神経を使う一局だった.
私はこうして,ペリエ緒戦のクリスマス対局を勝利で飾り,また続いていたR戦での連敗を止めることができた.やはりペリエだと思った.
<完>
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