♥ ライトサイド／ダークサイド

角の初期ポジションは８八（２二）の地点で，
このままだと，例えば隣の７八地点には永遠に侵入できません．

これは，チェス盤上の二人のビショップ
（ライトサイド・ビショップとダークサイド・ビショップ）
が，それぞれ白いマスと黒いマスのみを
守備範囲としているのと同じです．

将棋における角は，一度持ち駒となって再び盤上に放たれた時，
あるいは敵陣に侵入し「馬」へとプロモートした時に初めて，
この＜将棋盤のダークサイド＞へと降り立つことができます．
馬は上下左右への移動を許可されますので，この時
ライト／ダークの両空間を自由に行き来する能力を得ているのです．


このことを理解していると，
角をつかってちょっとした技をかけることができます．

侵入してきた龍に対して，先手が▲５九歩と叩いたところ．

いったい何をしているのかというと，
ダークサイド（５八）にいる敵の龍の位置を微調整し，
ライトサイドのマス（５九）へと呼びこんでいるのです．

なぜなら，端的に言えば，
味方の馬が現在１一地点（ライトサイド）に存在しており，
また恐らく今後もこのサイドで使い続けることになるであろうと
予想されるからです．

本譜では実際，30手後に▲２六馬と引いた手が
５九の龍にヒットし，後手は△４八歩の受けを余儀なくされています．
終盤の大事な局面でこうして手番を握った先手が
そのまま勝利を収めることになりました．


このように，１歩犠牲にしておくことで
後々いいことがあるかもしれないのです．
（ないかもしれませんが）


いずれにせよ，こうした使い方ができるのが，
角という駒の恐ろしいところではないかと思います．