音楽とかmacとか日々雑感とか
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お盆です.フランスもなぜか祝日.ビバお盆.
突然ですが今日はEQのお話です.例によってマニアックな話なので,音楽関係者以外は華麗にスルーして下さい.まず「そもそもEQ(イコライザー)って何よ」という所から入りますが,みなさんがコンポで音楽をお聴きになるときにひょこひょこ動いているゲージがありますよね.あれがイコライザーです.激しいダンスミュージックが好きな方は,思わず低音をバズーカブーストしてたりするでしょう.そういうことを可能にするのがこのEQなのです.でも本来は,equal(イコール)+ライズなので,むしろ全体のサウンドをなだらかに均質化させるという意味だったりします.均質化させることには或る大切な狙いがあるんですけど,それについては後で触れましょう.
EQには,大きく分けて三つの用途があります.ひとつは曲のミックスダウンが終わった後,全体のバランスを再調整する意味でかけるという使い方.ふたつめは,各楽器にかけて音色変化を狙う方法.そして最後に,ミックス段階で<ぶつかり回避>をするためにかけるやり方です.順に見て行きましょう.
1.マスタリング時,曲ファイル全体に施す方法
ちょっと次の写真を見て下さい.
<クリックで拡大,画面はAudacity付属のEQ(フリー)>
左(低音域)から右(高音域)にかけて,なだらかなラインが引かれているのが見えます.これはコロンビア社のLP時代のイコライジングを再現したものらしいのですが,低音を14dBは上げてますね.iPod+ヘッドフォン文化全盛の現在ではちょっと真似しづらい豪快なラインですけれど,当時はLPレコードなので,スピーカーから聴き手までの間の距離が計算に入れられているのです.その空間で音をまろやかにブレンドさせる訳ですね.「空気中では高音ほど直線的に飛ぶ」という特性を考慮したイコライジングになっていると思います.
最後に曲全体にかけるということで,コンポのEQもこれにあたります.ケースバイケースですが,わかりやすい使い方としては,欲しい音域のブーストになるでしょうか.
2.音色変化,なにかひとつの楽器にかける方法
ある楽器の音を変化させるためにEQを用いることがあります.これが最もダイレクトに効果を現すのは,シンセサイザーの,もっと言えばリード系の音です.しかし,たとえ(サンプラーのような)録音されたオーケストラの生楽器の音であっても,思い切りかけてやればやはり変化します.一般論ですが,ブライトで派手な音にするには低音を抑え,ダークでまろやかなサウンドにするには高音を抑えてみます.このあたりは完全に好みの問題となりそうです.
カットとブーストを駆使して,好みのサウンドを目指します.かなりレベルの高い使用法と言えます.
***
3.ミックス時,各トラックにかける方法
次に今日のメインである,ミックス段階でのEQについてお話しします.曲をお書きになるみなさんには半ば常識でしょうけれど,各楽器の音が喧嘩しないように,左右にパンを振って<ぶつかり回避>するテクニックがありますよね.でもこれだけでは少し足りないのです.たとえば中音域に各トラックの音が集中していたら,いくらパンを振っても音同士の喧嘩が起こってしまいます.譜面上であらかじめ回避しておくべきことでもあるんですけど,ミックスの観点からしますと,これに解決を与えるのがEQということになります.
具体的には,ひとつひとつの楽器にEQをほどこします.たとえば低音域をけずってもそれほど音色が変わらないような楽器については,ばっさりと低音カットしてベースやドラムのためにスペースを空けてやる,などといったことをします.実は左右上下前後のxyz軸方向,すべてにおいてこのような<ぶつかり回避>が可能です.それぞれパン,EQ,リバーブを用いますが,これについては今日は触れません.
次の写真をご覧下さい.
<クリックで拡大,GarageBand付属のEQ1>
これは高中低たった3バンドというおそらく最もシンプル化されたEQですが,ここにEQの基本的な考え方はすべて揃っています.つまり,<高音域,中音域,低音域>,<カットかブーストか>,EQというのはほとんどそれだけなんです.また,上から3つめのパラメータ(フリクエンシー)でピークの設定ができるようになっていまして(数値は出ていないが高音域から低音域までカバーしている),「中音域に山をひとつ作って後はカット」程度の目的にはこれでも十分使えます.
逆に,EQでもっとも本格的なものを見てみましょう.
<クリックで拡大,Kjaerhus社のEQ(VSTプラグイン,シェア)>
ツマミがたくさんあって目を回しそうですが,これは昔のイコライザ機材を模したデザインで,左から右へ低〜高音で5バンド用意されています.最上段がカットとブーストのツマミ,中段がフリクエンシー(Hz)の微調整,そして最下段(Q)はラインを鋭角に取るかなだらかにするかを決めるためのツマミです.これらの組み合わせで自由自在にEQカーブを描くことができます.低音以外抑えめ+1000Hz付近をピンポイントで上げて......などという細やかな設定も可能なのですね.
上画面でどの音域がブーストされているか一目でわかるなど,視覚的にわかりやすいのが良いですね.こういうのをグラフィックEQ(略してグライコ)といいます.赤いラインをよく見ますと,(これはサンプル画面をそのまま持って来ちゃったんですけど)ピークを3つ作ってあることがわかります.ただやはり操作は難しそう.こんな豪華なのはむしろマスタリングで使いたいでしょうか.昔の機材に慣れ親しんだ方にはとても使いやすそうなEQですなのが,現在はほぼ同等の機能で,しかももっとお手軽なものがあります.
<クリックで拡大,Linear社のEQ(VST/AUプラグイン,フリー)>
各トラックにかけるには,小回りの利くツールのほうがよいですね.これもグラフィックEQですが,シンプルかつ細やかな操作が可能になっています.最近はこうしたものがフリーで大量に出回っておりますので,使いやすいと思ったものをひとつ持っておくと何かと便利かと思います.
有名サイトですけれど,探しに行くときはここがお勧めです.
KVR Audio
まとめますと,ミックス段階におけるEQの効果は,「かぶっている音域を整理し,各楽器の住み分けをはかること(ぶつかり回避)」で,メインの使い方はカットということになると思います.
***
不足している箇所をブーストし,過剰な箇所をカットする,どこかの音域だけ飛び抜けて音が集中しているような事態を避けて最終的にはなだらかなラインを確保し,全体の均質化をはかる.それがイコライジングの根本思想です.最後に,先ほど保留してあった「EQによる均質化の<或る大切な狙い>とは何か」という問いに回答を与えて,今日のお話を閉じることにしましょう.
最も簡単な例を挙げますと,たとえば,低音域にたくさんの音が集中したままの状態で,マスターにマキシマイズをかけたとします.マキシマイザーは音の小さな中高音域を引き上げようとしますが,低音域が早々とクリップ(音割れ)寸前のレベルに到達してしまうために,思ったほどの効果を上げずに終わるのです.大きな音を抑えつつ同様の作業をするコンプレッサーでも同じような現象が起こります.したがって,あらかじめEQで均質化の下準備がすんでいれば,よりスムーズに音圧を稼ぎに行くことができるのです.
上に紹介したEQの3つの用途が,実は独立したものではなく,互いに連動してしまっていることにお気づきになった方もいらっしゃるかと思います.このようにEQの用途は多様で複雑ですが,使いこなせば便利な武器となります.またコンプレッサーと並ぶミックスの基本テクニックですので,是非覚えたいところです.しかれども,こうした知識は最終的には重要ではありません.自分の耳と経験,それが全てなのです.これを読んでEQがわかった気になっているそこの貴方.どうか実践経験を積んで下さい.いろいろいじってみて失敗して,不意にいい音ができて感動して,そうした経験が重要なのです.トライ&エラーの過程もまた楽しいものですよ.なぜなら,僕らは音楽が好きで創ってる訳ですから.
突然ですが今日はEQのお話です.例によってマニアックな話なので,音楽関係者以外は華麗にスルーして下さい.まず「そもそもEQ(イコライザー)って何よ」という所から入りますが,みなさんがコンポで音楽をお聴きになるときにひょこひょこ動いているゲージがありますよね.あれがイコライザーです.激しいダンスミュージックが好きな方は,思わず低音をバズーカブーストしてたりするでしょう.そういうことを可能にするのがこのEQなのです.でも本来は,equal(イコール)+ライズなので,むしろ全体のサウンドをなだらかに均質化させるという意味だったりします.均質化させることには或る大切な狙いがあるんですけど,それについては後で触れましょう.
EQには,大きく分けて三つの用途があります.ひとつは曲のミックスダウンが終わった後,全体のバランスを再調整する意味でかけるという使い方.ふたつめは,各楽器にかけて音色変化を狙う方法.そして最後に,ミックス段階で<ぶつかり回避>をするためにかけるやり方です.順に見て行きましょう.
1.マスタリング時,曲ファイル全体に施す方法
ちょっと次の写真を見て下さい.
<クリックで拡大,画面はAudacity付属のEQ(フリー)>
左(低音域)から右(高音域)にかけて,なだらかなラインが引かれているのが見えます.これはコロンビア社のLP時代のイコライジングを再現したものらしいのですが,低音を14dBは上げてますね.iPod+ヘッドフォン文化全盛の現在ではちょっと真似しづらい豪快なラインですけれど,当時はLPレコードなので,スピーカーから聴き手までの間の距離が計算に入れられているのです.その空間で音をまろやかにブレンドさせる訳ですね.「空気中では高音ほど直線的に飛ぶ」という特性を考慮したイコライジングになっていると思います.
最後に曲全体にかけるということで,コンポのEQもこれにあたります.ケースバイケースですが,わかりやすい使い方としては,欲しい音域のブーストになるでしょうか.
2.音色変化,なにかひとつの楽器にかける方法
ある楽器の音を変化させるためにEQを用いることがあります.これが最もダイレクトに効果を現すのは,シンセサイザーの,もっと言えばリード系の音です.しかし,たとえ(サンプラーのような)録音されたオーケストラの生楽器の音であっても,思い切りかけてやればやはり変化します.一般論ですが,ブライトで派手な音にするには低音を抑え,ダークでまろやかなサウンドにするには高音を抑えてみます.このあたりは完全に好みの問題となりそうです.
カットとブーストを駆使して,好みのサウンドを目指します.かなりレベルの高い使用法と言えます.
***
3.ミックス時,各トラックにかける方法
次に今日のメインである,ミックス段階でのEQについてお話しします.曲をお書きになるみなさんには半ば常識でしょうけれど,各楽器の音が喧嘩しないように,左右にパンを振って<ぶつかり回避>するテクニックがありますよね.でもこれだけでは少し足りないのです.たとえば中音域に各トラックの音が集中していたら,いくらパンを振っても音同士の喧嘩が起こってしまいます.譜面上であらかじめ回避しておくべきことでもあるんですけど,ミックスの観点からしますと,これに解決を与えるのがEQということになります.
具体的には,ひとつひとつの楽器にEQをほどこします.たとえば低音域をけずってもそれほど音色が変わらないような楽器については,ばっさりと低音カットしてベースやドラムのためにスペースを空けてやる,などといったことをします.実は左右上下前後のxyz軸方向,すべてにおいてこのような<ぶつかり回避>が可能です.それぞれパン,EQ,リバーブを用いますが,これについては今日は触れません.
次の写真をご覧下さい.
<クリックで拡大,GarageBand付属のEQ1>
これは高中低たった3バンドというおそらく最もシンプル化されたEQですが,ここにEQの基本的な考え方はすべて揃っています.つまり,<高音域,中音域,低音域>,<カットかブーストか>,EQというのはほとんどそれだけなんです.また,上から3つめのパラメータ(フリクエンシー)でピークの設定ができるようになっていまして(数値は出ていないが高音域から低音域までカバーしている),「中音域に山をひとつ作って後はカット」程度の目的にはこれでも十分使えます.
逆に,EQでもっとも本格的なものを見てみましょう.
<クリックで拡大,Kjaerhus社のEQ(VSTプラグイン,シェア)>
ツマミがたくさんあって目を回しそうですが,これは昔のイコライザ機材を模したデザインで,左から右へ低〜高音で5バンド用意されています.最上段がカットとブーストのツマミ,中段がフリクエンシー(Hz)の微調整,そして最下段(Q)はラインを鋭角に取るかなだらかにするかを決めるためのツマミです.これらの組み合わせで自由自在にEQカーブを描くことができます.低音以外抑えめ+1000Hz付近をピンポイントで上げて......などという細やかな設定も可能なのですね.
上画面でどの音域がブーストされているか一目でわかるなど,視覚的にわかりやすいのが良いですね.こういうのをグラフィックEQ(略してグライコ)といいます.赤いラインをよく見ますと,(これはサンプル画面をそのまま持って来ちゃったんですけど)ピークを3つ作ってあることがわかります.ただやはり操作は難しそう.こんな豪華なのはむしろマスタリングで使いたいでしょうか.昔の機材に慣れ親しんだ方にはとても使いやすそうなEQですなのが,現在はほぼ同等の機能で,しかももっとお手軽なものがあります.
<クリックで拡大,Linear社のEQ(VST/AUプラグイン,フリー)>
各トラックにかけるには,小回りの利くツールのほうがよいですね.これもグラフィックEQですが,シンプルかつ細やかな操作が可能になっています.最近はこうしたものがフリーで大量に出回っておりますので,使いやすいと思ったものをひとつ持っておくと何かと便利かと思います.
有名サイトですけれど,探しに行くときはここがお勧めです.
KVR Audio
まとめますと,ミックス段階におけるEQの効果は,「かぶっている音域を整理し,各楽器の住み分けをはかること(ぶつかり回避)」で,メインの使い方はカットということになると思います.
***
不足している箇所をブーストし,過剰な箇所をカットする,どこかの音域だけ飛び抜けて音が集中しているような事態を避けて最終的にはなだらかなラインを確保し,全体の均質化をはかる.それがイコライジングの根本思想です.最後に,先ほど保留してあった「EQによる均質化の<或る大切な狙い>とは何か」という問いに回答を与えて,今日のお話を閉じることにしましょう.
最も簡単な例を挙げますと,たとえば,低音域にたくさんの音が集中したままの状態で,マスターにマキシマイズをかけたとします.マキシマイザーは音の小さな中高音域を引き上げようとしますが,低音域が早々とクリップ(音割れ)寸前のレベルに到達してしまうために,思ったほどの効果を上げずに終わるのです.大きな音を抑えつつ同様の作業をするコンプレッサーでも同じような現象が起こります.したがって,あらかじめEQで均質化の下準備がすんでいれば,よりスムーズに音圧を稼ぎに行くことができるのです.
上に紹介したEQの3つの用途が,実は独立したものではなく,互いに連動してしまっていることにお気づきになった方もいらっしゃるかと思います.このようにEQの用途は多様で複雑ですが,使いこなせば便利な武器となります.またコンプレッサーと並ぶミックスの基本テクニックですので,是非覚えたいところです.しかれども,こうした知識は最終的には重要ではありません.自分の耳と経験,それが全てなのです.これを読んでEQがわかった気になっているそこの貴方.どうか実践経験を積んで下さい.いろいろいじってみて失敗して,不意にいい音ができて感動して,そうした経験が重要なのです.トライ&エラーの過程もまた楽しいものですよ.なぜなら,僕らは音楽が好きで創ってる訳ですから.
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なるほど~
こうやってわかりやすく解説してくれるところってなかなかないので参考になります^^
EQとコンプって似たようなもんでしょ?とか思っていた時代がありました。なんだか恥ずかしくなってしまいますね。
実戦経験は結構あるつもりだと思っていたんですが、ある曲はうまくいっても、次作ったらそうはいかなかったりとか、まだまだ思い通りに操れているとは言いがたいです。とにかく、さぼらないでしっかりとやりましょうというところなのだと思います。
EQとコンプって似たようなもんでしょ?とか思っていた時代がありました。なんだか恥ずかしくなってしまいますね。
実戦経験は結構あるつもりだと思っていたんですが、ある曲はうまくいっても、次作ったらそうはいかなかったりとか、まだまだ思い通りに操れているとは言いがたいです。とにかく、さぼらないでしっかりとやりましょうというところなのだと思います。
もふもふ
>makotoさん
やーほとんどmakoっちゃん狙い撃ちで書いたってば(笑) ネット上にはたぶんもっと専門的で細かい話がいっぱい転がってると思うんですけど,そういうのを読むときの足がかりになればと思います.
ぶっちゃけクラシックだと音圧がんがん稼ぎにいくことが少ないので,僕もまだまだ修行中なんですけど(笑),いっしょにがんばりましょー!
>えべっさん
うごー!おひさです! 元気してた?
「勉強になりました」ぢゃないよ!(笑) 僕のミックス技術はほとんどyebiっつぁんから教えてもらったものなので.いやー,ほんと早く戻って来てください.
PC組んだって自作ですか.外箱はやっぱりビヤ樽なんでしょうか.千葉ときいてネズミーランドを思い出した僕はマサトさんにしばかれそうです.
やーほとんどmakoっちゃん狙い撃ちで書いたってば(笑) ネット上にはたぶんもっと専門的で細かい話がいっぱい転がってると思うんですけど,そういうのを読むときの足がかりになればと思います.
ぶっちゃけクラシックだと音圧がんがん稼ぎにいくことが少ないので,僕もまだまだ修行中なんですけど(笑),いっしょにがんばりましょー!
>えべっさん
うごー!おひさです! 元気してた?
「勉強になりました」ぢゃないよ!(笑) 僕のミックス技術はほとんどyebiっつぁんから教えてもらったものなので.いやー,ほんと早く戻って来てください.
PC組んだって自作ですか.外箱はやっぱりビヤ樽なんでしょうか.千葉ときいてネズミーランドを思い出した僕はマサトさんにしばかれそうです.
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