♥ 生産する機械

この週末はへろへろで，２４にも行けませんでした．
EWにはちらっと行きました．最近ほぼ隠れキャラですけど（笑）．


我々の日常はルーチンワークの繰り返しかもしれませんけれど，
それでも日々何か変化を見つけに行くことができるという点では，
恵まれていると思います．


今日は女王アリのお話をしましょう．
虫が苦手な方やお食事中の方は，
ちょっと気持ち悪い話かもしれませんので，どうかスルーしておいて下さい．

先日うちの相方が（奴はいま東南アジアに住んでいるのですけれど），
部屋の中にアリの巣の入口を発見したというのです．

テーブルの上に置いてあった食べ物がたいへんなことになっていて，
それで気づいたのだそうですけど．


ある晩ついに駆除を決行したところ，わらわらと，
やはりたいへんなことになったのだそうです．


しかしながら駆除はなんとか成功しまして，
奴は再び平和な日々を手に入れたのですよ．


「女王アリは最後まで出て来ーへんかったけど」と相方は言いました．
僕は，「それは当たり前だ」と答えました．

なぜって，女王アリは動けないからです．


＊＊＊


以前，アリの＜結婚式＞のお話をしたことがあったかと思いますが，
空中で結ばれたカップルのうち，雌（めす）アリは，
地上に降り立つと地面に穴を掘り始めます．
彼女が新しい女王アリとなるのです．


ある程度掘り進んだところで彼女は部屋をつくり，そこで卵を生み始めます．
巣の拡大工事，食事の確保など，あとのことはすべて
生まれてくる働きアリたちがやってくれます．


彼女はもう巣から外に出る必要はありませんし，
玉座を離れるような用事もありません．

つまり，
運ばれてくる食事を摂り，卵を産み続けること，
それが女王アリの仕事であり，その生活の全てなのです．


彼女の身体はその作業に特化した形態に変化します．
「不必要な」四肢の機能は退化し，腹部が極端に肥大化し，
この時彼女は，ひとつの＜生産機械＞となります．


仮に巣全体が，何らかの外的要因によって滅亡する瞬間を迎えても，
彼女はやはり，玉座の間を動くことはありません．

働きアリたちが戻らなくなり，
栄養の供給が停止してからもしばらくのあいだ，
彼女は何も知らずに卵を産み続けるでしょう．止めることができないのです．
それが，彼女が機械たる所以（ゆえん）なのです．


＊＊＊


＜生産機械＞として一生を過ごすこと，
明らかにそれはルーチンワーク以上の何かです．


ただ，彼女にとって最後の救いはおそらく，
彼女がその機械の身体を土に還すことができるということなのです．