♥ 第六十四夜「国王暗殺」

手はずは全て整った．
夜を待ってサマンオサ城に忍び込む．狙うは暴君の首ひとつ．
これって「暗殺」ですよねと天野さんが興奮気味にいう．
でもネコの着ぐるみだと緊張感ない（汗）．


　　月は蒼々と　樹海を染めて


寝室への侵入ルートは既に下見済だった．
警備の手薄な東の塔から屋根づたいにバルコニーに出る．
窓から王の寝室にそっと滑り込むと，果たして情報通り
サマンオサ国王は其処に居た．眠っている．側近の姿は無い．

ラーの鏡は月下に暴君の真の姿を映し出す．
...やはり人ではない．異形の者だ．反吐が出そうになる．
静寂と沈黙．伯爵が小さく頷くのを見て，静かに短刀を抜きはらう．
だが，その首かかんとした刹那，ソレはゆっくり目を開く．


　　見たな．


醜い鬼の化け物は，生かしておかぬと正体を顕した．
メンバーに即時散開を指示，すみやかに臨戦態勢に移行する．


　　風は静々と　木々に戯れて


五月の呪文が室内に霧を呼び集めはじめると，
豪奢な寝室を照らしていた燭台の灯りがふっと消えた．
それが戦闘開始の合図となった．