♥ スミーガルは二度笑う

angband序盤の最大の見せ場といえば，やはりスミーガル君なのである．

『指輪物語』を読んだ方なら，あぁアイツかと思うだろうし，
映画『ロード・オブ・ザ・リング』を観た方なら，
あの "My precious...!" というセリフを連呼する
CG合成の小さな気色悪い生き物の姿が，頭に浮かぶことだろうと思う．
スメアゴル，の表記の方がしっくりくる方も多いかもしれない．

『指輪物語』の世界をベースにしたangbandでは，
地下3階前後というかなり浅い階層で，彼に会うことが出来る．
序盤にしては極めて珍しく，＜良質な＞アイテムを高い確率で残すので，
このスミーガル戦で何が得られるかによって，
その後の展開が楽になるかどうかが決まると言ったら，言い過ぎになるだろうか．

今日，十四月（レンジャー）は彼に会った．
場所は地下４階．

スミーガルは＜姿の見えない敵＞かつ＜冷血生物＞なので，
十四月の暗視能力をもってしても，相手がどこにいるかわからない．
ただ，突如何か攻撃を受けることがあり，その際に，
隣接するマスにヤツがいるらしいと判るのである．

弓の特性を生かすため，細く長い通路で待つ．
その状態で攻撃を受けたら，前か後ろのどちらかに敵はいるはずだ．
スミーガルは不利と見るとすぐにショートテレポートで逃げてしまうので，
やっと彼を倒すことができたのは，３度か４度の交戦の後だった．

床には，スミーガルが持っていたアイテムがばらまかれる．
そのなかにショートボウ（短弓）があった．心が踊る．

持っていた鑑定のスクロールを使うと，

short bow(x2) (+0, +0)

と出た．
魔法の武器でも何でもない，ただの短弓だった．

そんなはずはないと，周囲をうろうろ探しまわってみたが，
他に彼の残して行ったアイテムは無かった．
仕方なく街へ戻って，今日の戦利品を売り払って行く．

寺院で未鑑定のポーションをひとつ売った時のことだ．
刹那，神官は高らかに笑う．



どうやら十四月は，
浅い階層には決して落ちていないはずの強力アイテム，
*回復*のポーションを，くずのような値段で売却してしまったらしい．

マジっすか......！！！

もし可能ならば，神様には少し待って頂きたい．
しかし人生に待ったは無いし，それはangbandでも同様なのである．
この厳しい現実を受け入れるしか無いのだ．
ショートボウに思わず心を奪われた十四月（レンジャー）にとっては，
完全に盲点を突かれた形となった．

スミーガル，侮りがたし......！