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昨年末の予告どおり,トータルEQ(マスタートラックへのEQ)のお話をしたいと思います.これで一応,このEQ基礎論も完結ということになります.

トータルEQは,実はみなさんにいちばん身近なイコライザーなのではないでしょうか.例えば,むかしラジカセやコンポで音楽を聴いてるときに,低音をバズーカブーストするボタンとかついてなかったでしょうか.その他にも,音の聴こえ方をいろいろ変化させる機能とかなかったでしょうか.あれがトータルEQだったんです.今日はまず,その中身を覗いてみましょう.


iTunesの「イコライザ」窓をひらくと,いくつかプリセットが用意されています.



<iTunes「ポップス」のイコライジング>

こういうプリセットはもちろん一例に過ぎないんですけれど,この「ポップス」ではミドルが強調されているのがわかります.ボーカルを前面に出すためですね.伴奏はおとなしく脇役に徹していなさいということだと思います.



<「ロック」のイコライジング>

ところがこれが「ロック」になると,状況が逆転します.EQがV字を描いているのは,むしろギターやドラムをくっきり前に出すためでしょうね.ボーカルは普通にしてても十分聴こえるはずだという考えになると思います.


さていよいよ「クラシック」ですが,次のようになっていました.


<「クラシック」のイコライジング>

ロックと同じくV字系のイコライジング.もちろんこれが正解かどうかはわかりませんけれど,昨今の傾向が(ばりばりのクラシックからハリウッド系サントラまで含めて)こうなっているという事実は否定できません.


***


2009年1月現在,オーケストラ編成でのトータルEQの考え方の基本は,
だいたい以下のようなものになると思います.


1. ロー : ぜひブーストしたい

クラシック音楽のロー(低音域)は,LP時代からずっと強調されてきました.ここの土台がしっかりしていないと,あの大編成のサウンドを支え切ることができないという考え方からです.重厚で迫力のあるオーケストラサウンドを目指す場合は,きっちりブーストしたい帯域となります.


2. ミドル : カットしてもいい

つややかな響きを支えるミドルなのですが,近年は(次の)ハイの重要性が増してきていますので,とりわけサントラ系オケでは犠牲にされることの多い帯域になっていると思います.また,リバーブのもこもこ成分が滞留しやすい箇所だというのも,カット傾向の一要因となっているように思います.


3. ハイ : ブーストしたい

ハイの高次倍音を強調することで,華やかで輝かしいサウンドを確保しに行きます.サントラ系では思い切って突いていいですし,ばりばりのクラシックでも,ニューヨークフィルやボストン響のような明るい響きが欲しい場合は突いていきます.ただし,ローやミドルとの兼ね合いによってはぺらっぺらの音になってしまいますので,どこかにしっかりした支えを用意しておくのも重要です.


こうしたことを考え合わせた上で,オーケストラのトータルEQカーブをひとつ描いてみます.



<オケ用トータルEQモデル>

明らかにブーストしすぎで,こんな極端なイコライジングは実際にはあまりしないかもしれないんですけど,今日はわかりやすくということで(笑).いちばん上といちばん下はカットで,ローとハイを突いてミドルを切った感じですね.これを参考に,みなさん工夫をこらして頂ければと思います.

このEQを適用してみるとどうなるでしょうか.勝手ながらちょっと<第4回前夜祭>に寄せられたranaさんのミックスを使わせていただいて,実験させていただきました.


rana版(トータルEQ by 三月)


リバーブで奥行きを出しているのもあるのですが,原版と聴き比べていただくと,EQをあてる前に比べ楽器の音色が変わったのが確認できるかと思います.これは裏を返せば,<各トラックへのEQ>の時点では,その楽器の最終的な音色までを作り込む必要はない,ということになります.

つくるときの目安としては,各トラックへのEQでは「目の前で鳴っている楽器の音」を想定して,トータルEQでは「客席から聴いた時の楽器の音」を考えてみると,よいかと思います.もちろん,「金管はハイを突いた音が欲しいけど弦はもっとやわらかい音で欲しい」といった場合には,各トラックへのEQの時点で差をつけておくことになります.


トータルEQは全体の倍音傾向を揃えて,サウンドに統一感とまとまりを与える役割がありますから,全体へのリバーブと1セットで考えて下さい.なお今回マスターへのリバーブはこうなってます.




***


これで,オーケストラ編成のEQ基礎論は終了です.繰り返しになりますけれど,読んで分かった気にならないで下さいとお願いしておきます(汗).とにかく実践です.頭ではなくて,手と耳で覚えて下さい.最終的に頼りになるのは自分の耳だけなのです.

そして最後に,音楽家のみなさん,どうか楽しんで
これからもよい音楽を作り続けていって下さい.
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ふむふむ、なるへそ~
ちょっと自分の「ROCK作品」に不安に思うことがありましたので、「トータルEQ」読んで、すごく参考になりました!!ちょっと「疑問解決」しました(笑

でも「トータルEQ」の構成が「オケ曲」も「ROCK」も似ている感じなのがちょっと「驚き!」ながらも、自分が
「オケの勉強から、なにか「ROCK」に活かせる技術が必ずあるはずっ!」と思っていたことが確かなモノとわかり、ちょっと嬉しかったです、うん。

最近の僕の作品の場合「トータルEQ」は概ね上記と同じなんですが、やはり「Vo.」をより聴かせたいため(Vo.が弱いため)
・1Khz~1.2Khzだけを若干上げてやる(+0.2ほどの世界)
(ちょっと「POP」よりですね)

また「Vo.」周辺の
・800hz、1.4Khzをほんの少し抑えてやる(-0.2ほどの世界)

とより「Vo.」がすっきりします。「Vo.」まわりの「リヴァーブ」「その他エフェクト」の表情がきれいに現れます。


あと「オケ」ものについて
なんとなく「LO」のブーストに比べ、若干「HI」を抑えてやる(-0.2~-1の世界・・・ぐらい)とそれだけで低音がしっかり出る感じがします。
これって、ヘッドフォンやコンポスピーカの影響があるのかもしれませんが、本来人間の耳が「高音」は拾いやすい・・・性質?なのかもしれません・・・・よくわかりませんが・・・汗;


読ませていただいて、なんかえらくすっきりした気持ちになった「BLOG」でした(;0;)v
「ASP」影清 2009/02/08(Sun)00:05:36 編集
ねむいよう
>かげーきょさん
どうもです.今日は夜なべしてるようさすがに(汗

コンセプトは違うはずなのに,ロックと同型になるというのがなかなか楽しいですね.僕もギターでも初めてみようかなー(笑).ハイはたいてい「耳に刺さる」ような鋭い音の成分を含んでますよね.欲しい時とむしろ切りたい時とあるので,ローが上回ってるとgoodというのは結構正解なのかもしれないですね.なるほどです.

ボーカル周りにそんなことするんですかー,勉強になります.僕もボーカル使う曲のときはやってみたいです.ありがとうございます.
三月ウサギ URL 2009/02/08(Sun)10:53:48 編集
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